ベッドに入っても一向に眠ろうとしない奏の隣に寝そべりながら、がくぽは静かに溜息をついた。奏がきょとんとした顔でがくぽを見る。
「がくちゃん?」
「主、もう3時だ」
「知ってる」
何やら厚い本を読んでいる奏の顔色からは寝不足の気配は見られないが、いつまでも眠らないのではまた体調を崩すことになる。
がくぽの不安を知ってか知らずか奏はぺらぺらと本のページをめくっている。どうやら読んでいるというよりは眺めているだけのようだ。
「主」
もう一度、先程より強めに奏を呼ぶと奏は唇を尖らせて本を閉じた。それからごろりと横になって、がくぽをじいと見つめる。
「意地悪」
「カイトに怒られても知らないぞ」
にやりと奏が笑った。何を馬鹿なといった風な顔だった。
「カイトは僕のこと怒らないよ」
がくぽは奏の頭に手を置いた。たしなめるように何度か撫でる。奏は気持ち良さそうに目を細めている。
「そうやって余計な心配をさせるのはいけない」
「うん、がくちゃんの言うとおりだねぇ」
ゆっくりした口調で話した奏ががくぽの手を握る。でも、と笑顔のまま続ける。
「明日……あ、今日かな。今日はお休みだもの」
だからいいでしょうと言われてがくぽには返す言葉がなかった。その代わりに握られた手に力を込めた。奏が笑っている。
結局甘やかしているのだなとがくぽは心の中で自嘲した。奏は笑っている。このまま夜が明けるまで眠る気はないようだ。
「主」
寝返りをうって奏ががくぽに背を向けた。がくぽは背中に向かって声をかける。
「もう休んだ方が良いと思う」
「うん」
奏が黙ったので、がくぽは奏の胴に腕をまわして引き寄せた。奏はとろとろとまどろみながらがくぽの手を握っている。
「好き」
奏が何か言ったががくぽには聞こえなかった。