ぐち、と。奏の白い腹から音がした。溢れた赤色は奏を後ろから抱き締めているカイトの掌を染め、だらだらと落ちる。
「ん、くぅ」
引き攣れたような声で奏が呻いた。痛みを帯びながらも甘ったるい声。カイトが笑みを浮かべる。マスター、と耳元に囁くと、奏は荒い息をつきながらカイトを見上げた。
「か、い、と……カイト」
「可愛いです、マスター」
カイトは赤く染まった手をべろりと舐めた。奏の味がする。腹の中に突っ込んだ指を僅かに動かすと、奏がびくんと震えた。
「やぁ、あ、かいっ、と」
「マスター」
「いた、あ……」
「マスター」
内腑を撫で摩るようにぐちゃりと混ぜる。まるで夜の楽しみを錯覚させるその音に、カイトはくすくすと笑い声を上げた。
「僕はどうしたらいいですか?」
問うと、奏は震える指でカイトの腕に触れた。ひくひくと揺れている、白く細い指。
「指、抜いて……お願い、カイト……!」
「…………いいですよ」
腹の中、埋め込んだ指を、ずる、と引きずり出す。内腑を引っ掻けても良かったけれど、マスターが嫌がるから止めた。代わりに真っ赤な指をマスターの口に押し入れる。
「んふ、ぅ……っふぁ」
がりっ、と奏がカイトの指に歯を立てた。僅かに流れたカイトの血を、奏の舌が執拗に舐めている。カイトは奏の腹を強く押さえて止血しながら、このまま食べちゃいたいのに、と呟いた。奏がちらりとカイトを見上げる。指は奏の口に入ったままだ。
「……ひゃめ」
奏が舌足らずに禁止の言葉を吐く。カイトは笑った。
「じゃあマスター、舐めるだけ」
奏の口から指を引き抜いて言うと、奏はこくんと頷いた。その頬に小さく口づける。大好きです、マスター。奏は緩く笑った。
下腹の、小さくも赤く息づく可愛らしい傷。ちゅ、と口づけた後、ゆっくりと傷口に舌を差し込む。奏がカイトの髪を掴んだ。
「ひぁ、はぅっ……んぁあ」
カイトの舌の動きに合わせて奏がびくびくと震える。いやいやをする奏、カイトはそれでも舌を止めない。
「マスター、やっぱりおいしいです」
「カ、イトぉ……」
息を荒げながら奏はカイトの名前を呼んだ。カイトは顔を上げる。
「カイト、かいとぉ……」
泣きながら奏が手をのばす。カイトがその手を掴むと、追い掛けるように奏が抱きついてきた。
「マスター?」
「……あのね、好きだよ」
「……マスター」
カイトは奏を受け止めて、小さく笑う。僕だってマスターが好き。それはもう、食べたいくらい。奏はカイトにしがみついてぼろぼろ泣いている。
「マスター?大丈夫ですか?」
心配そうなカイトの声に、奏は顔を上げて頷いた。
「……ごめ、嬉しくて」
「え?」
「カイトが僕の事食べたいって、言ってくれて、嬉しくて」
奏の言葉に、カイトは思わず彼の首に噛み付いた。
「大好きなんです、マスター」