テレビを付けた途端、僕は思わずびくりとしてしまった。流れるのは深夜のニュース。お葬式。
夜中だから、マスターはもう眠ってしまっている。こんな時間まで起きているのは僕だけだ。
僕もいつか、マスターが動かなくなってしまうのを見るのだろうか。あんな風に送られて逝くマスターの傍らに、いるのだろうか。「僕」という存在は。
人間は変わる。成長していく。僕が来た時は中学生だったマスターも、もう高校生になってしまった。マスターは大人になっていく。
僕は、僕だけじゃなく他の皆は、そんな事がない。
いつかは置き去りの僕達に飽きて、マスターは僕達を無かった事にしてしまう?
ぐらりと足元が傾いだ。僕は辛うじて壁に凭れ掛かって、ゆっくり深呼吸した。心臓がどきどきしている。僕は初めてマスターを怖いと思った。マスターは優しいけれど、僕を捨てる事が出来るって知って怖くなった。
次の話題になったテレビを消して、僕はその場にうずくまった。泣きそうになってぎゅっと目を閉じる。
ぎし。
階段の音に僕は顔を上げた。慌てて立ち上がって、電気を点けていない居間を見渡す。
「カイト?」
マスターの声に僕はびくっ、と顔を強張らせた。どうしてこんな時に起きちゃうんだろう。マスター。
「…………何やってるの?」
マスターの不思議そうな声がした。近づいて来る気配がした。僕は手をのばす。マスター。
「マス、ター」
「ん」
声で居場所を判断したマスターが、僕がのばした手に触れた。
「どうしたの?」
あんまり優しい声で、マスターには僕の苦しみなんて全然分からないはずなのに、僕は泣いてしまった。マスターは近づいて来て、手探りで僕の頬に触れた。
「マスター……!」
僕はマスターに抱き着いた。縋り付いたって言った方が正しいかもしれない。マスターは何も言わない。
「僕、貴方とずっと一緒にいたいです……っ」
「………僕もだよ、カイト」
マスターは笑みを浮かべた。
「泣かないで」
マスターは僕の頭を撫でた。折れそうな腕。この腕に、僕は何度助けられたんだろう。
「考えなくて、いいんだよ」
お願いだから、別れを考えないで、お願いだから。