いたずらに手を上げる。ぽたぽた、狂いそうに赤いそれは、僕の、まっ白い腕を流れて、どこにいくんだろう。流れた僕の命は、最初は床に落ちるけれども、やがてはからからに乾いて跡形もなくなってしまう、そんなことはわかりきっていて、だから僕はぼんやりカッターナイフを握りしめながら、どこにいくのか考えている。
「ま、すたー」
床から、僕の赤いのがぼたぼた降っているそのフローリングの床から、声が聞こえた。僕は床に視線を向ける。カイトだ。さっき余りに僕の姿を見て泣き叫ぶから、可哀相で強制終了させてしまって、落ち着いた頃に再起動したのだった。やっぱりまだ泣きそうだった。申し訳ないけれど、でも、僕はカイトが僕の事でわんわん泣いたりするのが、正直に言ってこういう時は煩わしかった。
「マスター、だめ、です」
「カイト黙って」
僕はカッターナイフの刃を思い切り握りしめた。カイトが悲鳴を上げる。やめて、やめてくださいマスターやめて!
「カイト」
僕はカイトの腕にカッターナイフを突き刺した。ひ、とカイトが泣く。僕の血がカイトの腕にどんどん染み込んでいく。
「うるさい、よ」
「マスター!」
「黙れよ!」
僕はカッターナイフを放り捨てると、カイトのそばに蹲った。カイトがおずおずと手を伸ばしてきて、僕の頭を優しく撫でた。僕はカイトにとてもひどい事をしたのに、カイトは、どこまでいっても優しくて、だから僕はそんなカイトに甘えてしまう。痛い。
「ごめ、ごめんねごめんねカイト」
「だいじょぶですよ、マスター」
カイトはとても苦しそうに優しく笑って、僕をぎゅっと抱きしめた。苦しかった。嬉しかった。
(このまま夢が終わればいいのに、本当に、終われば)
(きれいなままで、)