ぼーっと湯船につかりながら、俺は何とはなしにマスターを見ていた。シャワーを浴びているマスターの身体は彼の体質のせいか肋骨が浮き出ていて、ひどく貧相な眺めだった。がりがりの、今にも折れそうな身体。流れていく泡が滑っていく。マスターが髪を掻き上げて俺を見た。
「レン、交代」
奏はそう言うと立ち上がった。その瞬間わずかにふらついた彼に、レンが思わず声を上げる。
「マスター!」
「あ、ごめん……大丈夫だよ」
奏はそう言って笑うと、ゆっくりと浴槽に足を入れた。代わりにレンが外に出る。
ばしゃばしゃとレンが髪を濡らしていると、奏の鼻歌が聞こえた。ぱちゃん、と湯が跳ねる音がする。
「マスター、歌うの好き?」
レンの問いに、奏はにっこりと頷いた。当然、と言うように笑みが深くなる。
「歌うのが好きなのは、みんなと一緒だね」
「……そうだね」
シャンプーを流しながら、レンはあっと声を上げた。
「マスター、のぼせるからもう上がったら?」
「………あー……うん、分かった」
奏は渋々頷くと、ざぱりと湯船から出た。そのまま浴室を出ていく。
ガラス越しに映った奏が不満そうに呟いた。
「レンったら。心配し過ぎ」
「この間みたいに倒れられたらこっちが困る」
いじわる。と奏は呟いて、カイトー、とリビングに声をかけた。すぐにぱたぱたと足音がする。
「マスター、髪の毛ぐしゃぐしゃです」
カイトが笑うのが聞こえた。


レンがリビングに向かうと、奏がカイトに髪を拭かれているところだった。
「レン、こっちおいで」
奏の手招きにおとなしく従うと、レンの肩にかかっていたバスタオルがふわりと浮いた。そのまま奏が髪を拭く。奏の細い指がタオル越しに感じられて、レンは照れたように唇を尖らせる。奏が笑うのが分かった。


のぼせた時とは大違い。