夏恒例の心霊特集3時間スペシャルが恙無く終わり、スタッフロールでテレビを消した。暗くなった画面に映るのは、けろっとした顔の奏とレン、大きく深呼吸したカイト、そして奏の腕にしがみついてぶるぶる震える涙目のリン。奏はぽんぽんとリンの頭を撫でた。
「だから怖かったら見ない方がいいよって言ったのに」
「だ、だって皆が見るって言うから………っ!」
リンは抗議の声を上げた。テレビが消えた居間は静かで、カーテンの向こうを変に意識してしまう。果たしてこれで眠れるだろうか。
「マ、マスターあのね、お願いがあるの」
リンがぐいぐいと奏の腕を引く。奏は頷いた。
「いいよ、一緒にいてあげる」
ぱぁっ、とリンの顔が輝いた。にわかに嬉しそうになって、笑っている。
「ありがとう、マスター!」
「怖いの分かるからね。カイトは大丈夫?」
「僕は大丈夫です」
カイトは頷いた。その割に大分不安そうではあるのだが。奏は立ち上がってカイトに言った。
「………皆で一緒に寝る?」
「だっ、大丈夫ですってば!ねぇ、レンくん!」
カイトがあたふたと手を振ってレンを見る。レンはといえば、不思議そうな目で奏を見ていた。
「よくそういう事言えるよな」
「まぁほら、カイトもリンも怖がりだし、僕は一人しかいないし。妥当案?」
奏の言葉にレンはふぅんと声を上げた。
「でもさ、寝る場所ないよ?」
「………あー……そっか……。居間、は……」
奏が言いかけながらリンを見ると、彼女はぶんぶんと思い切り首を振った。
「じゃあ仕方ないね、皆で一緒に部屋に戻ろうか」
言うが早いか奏は歩き出した。赤いパジャマからのびた白い腕、右側にリンをくっつけて、ゆらゆら廊下に消えていく。ぱち、ぱち、と電気がつく音。
「レン、電気消してきてね」
奏の声に答える代わりに、レンは今しがた出た居間の電気をぱちんと消した。
階段を上がってすぐ側の部屋から順番に、カイト、レン、リン、奏と並んでいる。奏手作りのプレートがぼんやり浮いていた。
「カイト、お休み」
奏はそう言うとカイトにぎゅっと抱きついた。ぽんぽん、と背中を叩く。
「貘さん、カイトの悪夢を食べて下さい」
「お休みなさい、マスター、リンちゃん、レンくん」
カイトは一度笑みを浮かべると、ぱたんと部屋の扉を閉めた。
「貘って何、マスター」
「悪夢を食べてくれる動物だよ」
奏はレンの扉の前で笑う。
「お休み、レン」
「お休みマスター。リン、あんまりマスターに迷惑かけんなよ」
レンの言葉にリンはあっかんべーをした。
「分かってるよ!」
レンは溜息を一つ返し、部屋の中に消えた。
「リン、廊下の電気消すよ」
奏はぱちんとスイッチを切る。暗くなった瞬間、リンの部屋の電気がついた。
「マスター、ごめんなさい」
ベッドに入りながらリンが言うと、奏は何も言わずに笑みを浮かべた。
「いいよ」
奏はベッドの横に座り、リンの小さな手を握る。
「こうしててあげる。大丈夫、僕がいるから。………お休み、リン」
「うん……お休み、マスター」
やがて聞こえてきたすやすやという寝息に奏は安堵した。ゆっくり慎重に手を解いて立ち上がる。ぱちんと電気を消し、扉を開けて奏は振り返った。くすりと笑う。
「悪戯しないでね、君達」
ぱたん。閉じた闇には何もいない。