マスターが吐いちゃうと、私はびっくりしちゃって何も出来なくなる。ただびっくりしたままの目で泣いてるマスターを見て、それから慌てて違う部屋に移る。マスターが戻ってきても水を出してあげる事も出来なくて、レンがマスターに水をあげるのをじぃっと見ているだけ。
マスター、私、マスターの事好きだよ。

今日、マスターは学校から帰って来てすぐに吐いちゃった。洗面所からすごく水の音がする。ざーざーって。大丈夫かなぁ、マスター。
「………」
レンが黙って水の入ったコップをテーブルに置いた。そして私と同じように洗面所を見た。それからレンはどこかに行こうとしたから、私はその手を掴んだ。レンが不思議そうな、嫌そうな顔をした。
「一緒にいて」
「………分かったよ」
レンは小さく溜息をついて私の横に座った。ちょうどその時、洗面所から聞こえていたざーざーが止まった。ぺたぺた、足音がして、マスターがひょこっと顔を出した。マスター、真っ青。それに目が真っ赤。マスターはふらふらしながら私の隣に座って、コップを持ってこくん、って水を飲んだ。
「……ありがとう、レン」
「……ん」
マスターは何だか辛そうに笑った。私はマスターの手をぎゅっと握って言った。
「マスター、大丈夫だよ。私もレンもカイト兄さんも、響さんもミクちゃんも、皆いるよ」
「………え」
マスターはすごくびっくりしたみたいだった。私、何か変な事言っちゃったのかな?レンも何だかびっくりしてるみたい。
「マスターを一人にする人、お家には誰もいないよ」
私がそう言ったら、マスターの目からぼろぼろ涙が流れ始めた。レンが立ち上がった。
「マスター」
「……あ、れ?」
マスターはようやく自分が泣いてるのに気付いたみたいで、頬に手を当てた。そのままマスターは顔を覆っちゃった。泣かないで欲しいけど、私は黙ってマスターの肩に手をのせるだけしか出来なかった。
レンがぎゅっと眉を寄せてマスターの隣に座る。ぴったりくっついて、俯いた。
「………ありがとう」
マスターが泣きながら、でもにっこり笑って、私とレンをぎゅーって抱き締めた。
「みーんな、マスターが大好きなんだよ!」
私はマスターみたいににっこり笑って言った。


だーいすきだよ!