マスターと一緒にテレビを見ている。マスターはさっきからテレビの画面で動いている人たちを見ている。私はそんなマスターの横顔を見ている。
マスターはいつだって、ニュースだってバラエティだって、テレビを見ている時はあんまり笑わない。心霊特集とかは抜きにして。
私には心霊特集の面白さはちっともわからないけれど、だって幽霊なんか見たって怖いだけなのに、マスターが笑ってるなら何でもいいかななんて思ってしまう。
テレビを見たら、どこかの国の動物園で産まれたライオンの赤ちゃんが映っていた。
「わ、かわいい!」
私の言葉にマスターは頷いて、そうだね、可愛いね、って言った。それから私を見て、あの子はお母さんに育ててもらえないみたいだよ、と寂しそうに言った。
育児放棄、とキャスターさんが言った。かわいそうだなと思った。でもあのライオンには、ちゃんと育ててくれる人がいるから大丈夫。
「大丈夫だよマスター、生き物って強いんだよ」
よくわからないことを言ってしまったような気がして、私は小さく首をすくめた。何が言いたいんだろう。
マスターはくすくす笑って、それから私の頭を撫でてくれた。そっか、リンはすごいね、やさしいねって。
「動物園、今度行こうか」
「ほんと?行きたい!」
動物園。マスターと一緒にお出かけ。すっごい嬉しい!
マスターはあんまり出歩くの好きじゃないって言うけど、たまに私たちを色々なところに連れて行ってくれる。水族館とか映画館とか、公園とか。
私はそのたびにはしゃぎすぎて注意されるけど、マスターが楽しそうだからついはしゃいじゃうってことは内緒。
さっきマスターは私のこと優しいって言ったけど、ほんとに優しいのはマスターの方。
だってマスターは人ごみがすごく苦手なんだもの。それなのに遊びに連れて行ってくれる。撫でてくれる。
「マスター、優しいね」
私の言葉にマスターはぽかんとした。へっ?って、間抜けな声が出た。
「だってマスター、皆で遊びに行ってくれるんだもん」
マスターはぱちぱちと瞬きしてから、笑った。
「それだったら、リンの方が優しいよ」
マスターは私をじっと見て、茶色い目をゆっくり細めた。
「リンは僕のこと、すごく心配してくれる」
「それはマスターだからだよ!」
私だけじゃない。カイト兄さんもレンもがくちゃんも帯人も、みんなみんなマスターを心配してる。それくらい私にだってわかる。
だからねマスター、私だけじゃないの。マスターの周りには、優しいのがいっぱいなんだよ。
「私だけじゃないもん。みんな、マスターのこと心配で、大事なんだよ」
私はマスターの手を握った。マスターは私を見ていた。
「だからね、一番優しいのはマスターだよ」
私たちは、きっとその優しさに惹かれているだけなんだ。まぶしいくらいのマスターに、近寄っていたいだけなんだよ。
マスターは何も言わなかった。ただ、私の頭をぽんぽん叩いただけだった。

私はちょっと泣きたくなった。マスターの手が優しかったから。
マスターはきっと泣きたかったんだと思う。わからないけど。

テレビはコマーシャルになって、はしゃいだ声が響いていた。