最寄駅から電車に乗って二つ。人はまばらな夕暮れ時。少年を中心に集まった、色とりどり。
「マスター、今日は何買いにきたの?」
ぴょこぴょこと頭のリボンを揺らしながらリンが問うと、奏は笑いながら言った。
「皆の服買いに来たんだ」
そろそろ新しい服欲しいかなぁと思って、と言う奏にカイトが笑みを浮かべる。
「マスターだってそうですよね?」
昨夜、楽しそうに電話をしていた様子からも明らかだ。カイトの指摘に奏は首を竦める。
「あ、マスター」
レンが声を上げ、通りの向こうを指差した。奏がそちらを向き、近づいてきた人影に手を振る。
「ゆっくん、ひっくん」
「奏くん」
ゆくえとひなたと合流すると、奏は背後を振り返った。
「僕の友達、ひっくんとゆっくん」
「こんにちは、坂島ゆくえです」
ぺこりと頭を下げたゆくえにつられて、リンがお辞儀をする。
「鏡音リンです!あと、弟のレンとカイト兄さん!」
「御浜ひなた」
ひなたはそう言って、少し笑った。
「見れば見るほど目立つな」
「いつもマスターがお世話になってます」
カイトが言うとひなたはけらけらと笑った。
「保護者じゃないって」
「じゃ、そろそろ行こっか」


「ねぇねぇマスター!これ可愛いよ!」
リンが花柄のワンピースを前に当てて奏を呼ぶ。奏は色違いのワンピースを取って、こっちも可愛いよと言っていた。
「黄色じゃなくて、ピンクがほしいの」
「ピンクだったら、これは?」
奏が出したのはハートが可愛らしいキャミソール。リンの顔がぱあっと輝いた。
「可愛い!ねぇマスター、私これ!」
「いいよ。あとは?」
そのやりとりを見ていたカイトに、ゆくえが苦笑しながら声をかける。
「カイトさん、これどうかなぁ?」
「え?」
カイトがゆくえを見ると、ゆくえはにっこり笑った。
「よかったら、一緒に見ない?」
「あ、はい!」
カイトは頷いて辺りを見回した。
「あれ、レンは?」
あぁ、とゆくえは肩を竦める。
「ひなたんと一緒」
ひなたはレンにあれこれと服を当てて何やら考え込んでいる。
「お前さぁ、お姉ちゃんと服同じの着たりする?」
「しない」
レンが首を振ると、ひなたはふぅんと気のない返事を返した。
「かな、どんくらいなら払えるんだろう」
「マスター、いつもあんまり考えてないよ」
「まじで?」
ひなたは目を丸くした後、でも安い方がいいよなと呟いて別の服を手に取った。
「じゃあこれ、お前とお姉ちゃんにな」
レンの手に押し付けられたのは、赤と青の服。
「……ありがとう」
「や、金払うのかなだろ?かなに言ってやりなよ」
ひなたはレンの頭をぽんぽんと叩くと、レンと一緒に奏の方に歩いていった。

「ねぇ、マスターはピンクと黄色どっちが好きー?」
首を傾げるリンに奏はそうだなーと指を立てる。
「花柄だったら黄色、ハートならピンク」
「……いじわるー」
リンは頬を膨らませた直後ににこっと笑った。
「マスター、ありがとう!」
奏は笑って、リンの頭を撫でた。

「かなくん、ちょっと買い過ぎなんじゃないのかなぁ」
ゆくえの呆れた声に、奏は少しだけ困った顔をした。
「だって、ねぇ」
「まぁ、気をつけて帰れよ」
ひなたはそう言って苦笑する。
「迷子になるなよ」
「ひっくんたら、誰のこと」
奏はあははと笑って、それから手を振った。
「ひっくんもゆっくんも、気をつけてねー」
「うん」
「また明日ねー」
ゆくえはぱたぱた手を振って、ひなたと一緒に歩いて行った。
「それじゃあ僕たちも帰ろう」


マスターに買ってもらった服は、どれもとっても可愛くて、早く着たくて楽しみ。
マスターが選んだのはハートがいっぱいで、何だかちょっとくすぐったい。マスターのこと大好きなのは、私の方なのに。
あと、マスターのお友達、ひなたさんの選んでくれた服もすっごく可愛かった。レンとおそろい。おそろいなんて着たことない。でも嬉しい。
ハートって、好きってことだよね。愛ってことだよ。
ね、マスター。大好き!