――かごめ かごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる
   夜明けの晩に 鶴と亀が 滑った
   後ろの正面――


「だーれだ」
ぽん、と両目を塞がれて、奏は小さく肩を竦めた。声の主はわかっている。
「たーちゃん」
「せーかい!」
帯人は楽しそうに笑って、奏の隣に座った。奏は手にしていた針と糸をテーブルに戻す。
「危ないよたーちゃん。手に刺さったらどうするの」
咎めるのは言葉だけで、声にはむしろ楽しそうな響きが溢れていた。帯人はそれを知っているからあえて何も言わなかった。
「ますたぁ、歌おうか」
「童謡ならなんでもいいよ」
奏は黒い猫を弄びながら言う。手の中にある分身はついさっき二つから一つに戻ったばかりだった。直された縫い目が、ぶちり、とまた少し外れた。
「ますたぁ、それ俺の」
「知ってる」
帯人の手をかわして奏は針を取る。もう一度戻さなくてはいけないようだ。帯人は戻ってこない猫に不満げだったが、やがて歌い出した。

――倫敦橋 落ちた 落ちた 落ちた
   倫敦橋 落ちた お嬢さん――

「Take the keys and lock her up,
 Lock her up, lock her up,
 Take the keys and lock her up,
 My fair lady.」
奏は呟くと針をテーブルに落とした。すっかり直された猫を帯人に渡すと、彼は嬉しそうに笑った。
「ねぇねぇますたぁ、橋が落ちたら皆どうしたんだろうね」
猫に額をぐりぐりと押しつけながら聞く帯人に、奏はくすくすと笑いながら答える。
「落ちたら違うところに行くよ」
「……つまんないの」
帯人の手の中で、小さな奏がぐにゃりと歪んだ。布が伸びる。
「また殺すの、たーちゃん」
「……」
帯人は黙って奏の肩にもたれかかった。奏はしょうがないといった風に帯人の髪を撫でる。猫は奏の肩に押しつけられていた。むにゅ、と頬がへこんでいる。
「ますたぁ」
帯人が奏の肩に額を押し当てる。
「俺が壊れても、違うところに行くの」
「いってほしいの?」
「そんなことしたら、ますたぁのこと」
ぎち。帯人の指で猫が首を伸ばす。奏は黙ってそれを見ていた。
「こう、しちゃうかも」

ぶつん。

「しないってわかってるんだから、殺さないで」
呆れたような奏の声に、帯人は渋々頷いた。

(ますたぁのこと好きだから、だから俺がころしたいの)

「だめなの?」